最近、ある目的があって一つの文章を書いている。パソコンで書いているのだ。
そんな仕事をしている時、電話のベルがなった。手を離したくなかったが仕方なく受話器をとった。
男の声で名を名乗り、「覚えていますか」と言う。今聴いた名前さえすぐに忘れてしまって思い出せない私に、そんなことを聞いたって覚えているはずがない。
すると(これも忘れたのだが・・・)商品取引所の者で、一年ほどこの町の担当をしていたが、この度転勤になったのでご挨拶をしようと思って電話をしたのだと言う。
そんな人に覚えがないがと考えていると、「この町担当で仕事を始めた時、電話で私が温かい受け答えをして、最後に私は高齢でもあり協力することは出来ないが、頑張ってくださいと言ったのだそうである。
どこへ電話をしても、怒鳴られたり、なにも言わずに切られたりして落ち込んでいた時だったので、私の励ましの言葉が涙が出るほど嬉しかった」と言うのである。
覚えていないかと言われるが、なんとなく覚えているような気もするが、もちろんはっきりと覚えてなどいるはずがない。
「あの時の嬉しかった思いが忘れられず、この町を去るにあたって一言挨拶がしたくて電話をかけているのだ」と言う。

 私は彼の話を聴きながら、電話応対の意味と、難しさを考えたのであった。 

2011年9月17日

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